「深山さんともう少し話したいです、お願いします!」なんて拝まないで。
どうしよう、無理だよ……
皆の圧に押されまくっていたら後ろから「深山」と腕を掴まれた。
もう声でわかる。
見上げれば整った綺麗な顔。
「悪いな、ちょっと仕事で深山借りるわ。来週の定例会議で使うサンプル、急遽見せる事になったんだけどいける?」
「あ…はい、すぐ用意します」
副社長の機転の効いた助け舟に即乗っかる私。
ポカーンと口の開いた皆さんに「失礼します」と言い残しその場を離れた。
先を歩く副社長の後につく。
曲がり角を曲がったところで立ち止まられるから危うくぶつかりかけた。
もう皆からは見えない死角に居る私達。
強引に手を引かれ歩いて行く。
怒ってるって一瞬でわかった。
でも仕方ないじゃん……
グイグイ引っ張られて痛い。
すっかり外は夜で暗い。
本社内も1階ロビーは電源が落ちていて薄暗い。
エレベーターには乗らず少し奥の応接室みたいな部屋に連れ込まれ鍵を閉められた。
壁側に追いやられもう私には後がない。
ヤバ……相当怒ってる………
睨みつける瞳に余裕がないのも手に取るようにわかってしまう。
冷静で居られなくなったあなたは今……独占欲の塊。
薄暗い中で見つめ合う瞳。
少し走ったせいで息遣いも荒い。
ドン!と真横の壁に拳をぶつける副社長。
「頼むから…!これ以上俺をイライラさせるな」
「ご……ごめんなさい」
荒んだ瞳が怖くて泣きそうになる。
今までに見た事のない顔してる。
私の知らない副社長が目の前に居る……

