「おはようございます、副社長」



「おはよう」



いつもの通り挨拶を済ませエレベーターに乗る。
扉が閉まった瞬間。



「プリンご馳走さまでした。それと…失礼な事してすみませんでした」



深く深くお詫び申し上げます。



「どこまで覚えてんの?」



「いや…全く」



「ハハハ、じゃあ後でお友達に聞いたんだ?ていうか凄いキャラと飲んでんだな」



「はい……」



「そう落ち込むな、俺が勝手に行っただけだから」



そう言われても当分引きずりそう。
かなりの失態だもん。
私の積み重ねてきた実績が脆とも崩れ落ちた瞬間よ……



「その、どこまで聞いたかわかんねぇけど……その…なんだ?アレ……アレだよ」



何か言いたそうだけど、何となく想像がつく。
お互いに赤面して空気が暑い。



「アレですね?そうですよね」



ダメだ……動揺してるのバレバレだ。
まともに顔見れない。
扉が開く瞬間、肩を叩かれ「いつも通りの俺らで居ようぜ」と言ってくれた。



返事をするだけで精一杯だったけど、歩き出した背中を見ていつも思う。
私は、自信に満ち溢れているこの背中が好きだ。
どんな事にもめげず、弱音も吐かない、自分の力を信じて真っすぐ突き進む後ろ姿を毎日見ていたい。



時々振り返って「深山」と私を呼ぶ横顔も好き……



コーヒーをお持ちして……飲む時のしなやかな指や唇を見てしまう。
私に気付いて「ん?」って眉を上げる仕草も本当は凄く好き……



って、私めちゃくちゃ意識してんじゃん!
あんな事聞いたからもうそういう目で見てしまうじゃない。
ダメダメ、仕事に集中しなきゃ。