バン!とテーブルにグラスを置いた紗和がまた近寄って来て…俺の顔に人差し指で触れてくる。



「そうそう……ここと…ここと…このへん似てる〜」



「え?誰に?」



「副社長……」



「「えっ!?」」



一気に視線が集中してどうリアクションしていいかわからなくなる。
急によそよそしくなる2人。
携帯で会社を調べたのか俺がその上司だと確信したようだ。



「だいじょ〜ぶ……こんなとこに居るはずないよぉ…」



そうだな、普通居るはずがない。
俺だって今のこの状況が不思議でならない。
プリン屋にさえならなければ。
金髪に気に入られなければ………ここには居なかった。



ガクッと頭を俺の方に預けてきた紗和に皆が戸惑う。
突然シーンとした空気の中でポツリと、はっきり耳に届いた言葉……



「なぁんで好きになっちゃったんだろ……」



思わず顔を向けてしてしまった。



「や、やだ…紗和ったら何言ってんのかしら」



慌てふためく金髪に微笑みかけた。



「深山?おい、深山?寝るならちゃんとベットで寝ろ?」



本当は抱きついてきてる紗和を感じていたいけど今じゃない。
そういう事はシラフの時に言え、バカ。
でも……充分過ぎた。



ひょいと抱きかかえベットに寝かせた。
布団をかぶせてしばし見つめる。
スヤスヤ眠るあどけない寝顔。
そのまま2人に背を向けて俺は言った。