狙った獲物は必ず手に入れる男で有名な堀越社長。
このシチュエーション、この顔、この甘い囁きに何人もの女が落ちていったのだろう。
社長にとっては思惑通りなのか、慣れた雰囲気で顔が近付いてくる。
唇が重なる一歩手前………
両手で体を押し、間を作る。
「もしここでしたら…本気で軽蔑しますよ?」
これで引き下がらなかったらもう終わりだ。
奪われる覚悟っ…!
腹をくくるしかない!?
スピーチが終わったのか、会場内が騒がしくなってきた。
誰かが出て来る可能性もある。
隙を狙って社長の手元から離れ会場に戻った。
今にも外に出て行きそうな副社長とすぐに合流した。
周りの目もあるから下手に声を荒らげれない様子がヒシヒシと伝わってくる。
「席を外してしまい申し訳ありません」
あぁ……目が完全に怒ってる。
小さな声で「何もされてないな?」と聞いてきた。
「はい。あ、食事でしたね?取ってきます」
お皿に取っているとまたもや堀越社長が登場。
後ろにつかれる。
慌てて副社長も来るもんだからややこしい事態に発展してしまう勢いだ。
「圭介、てめぇ…」
「さっきは楽しかったね、紗和ちゃん」
まるで副社長を無視したかのように私に話しかける堀越社長。
ちょっと…!これ以上掻き乱さないで!
「また続きやろうね」ってウィンクしてくる。
わざと副社長を煽って私達の仲を切り裂こうって魂胆!?
さっさとお皿に盛って2人を引き離そう。

