「……ら、さーくーらっ」


「……」


「……水野咲良!!」


「は、はいぃ!」


ガタッと音を立てて立ち上がる。


周りには……誰もいない。


「もー、みんな帰っちゃったよ?」


下から声がして見ると、絢香が呆れた顔で私のことを見上げていた。


「あ、あれぇっ!?私今まで何して……た?」


「授業中はずっとぼーーっとしてたよ」


そう言えば5、6時間目の授業の記憶が無い。


私そんなにぼーっとしてたのか……。


「ふわぁぁー」


両手を上に伸ばしながら大きな欠伸をする。


「あ~眠い。……ってあれ?絢香、ジャージ……」


絢香はジャージの格好をしている。


ということは……。


「部活だよ。咲良のことが気になって着替え終わってから教室来たらまだぼーっとしてるんだもん」


大丈夫?と首をかしげて言う。


私は絢香に向けて右手の親指を上げる。


「じゃっ、部活行ってくるから。早く帰りなよ?」


そう言って絢香は教室のドアへ向かう。


「はーい……あ、絢香っ、ありがとね!わざわざ」


「どういたしまして」


ニコッと笑って絢香は教室を出ていった。