―記憶が一日しかもたないっていうのは、
 前向性健忘っていう病気らしい。
 私は事故を境に、そういう病気を発症してしまったんだって。
 起きると事故後の記憶が全くない。
 すっかりそのまま抜け落ちてしまうんだって。
 そういう病気を、あなたは患ってしまった。
 でも悲観しないで。いいことだって、
 きっとあるはずだから。









何が、いいことだ。
そんなの、全然良くないじゃない。


何その病気。そんなのあり得るの?


ということは、施設長やおばちゃんの言ってることは全部、
嘘じゃなくて本当だっていうの?


私は事故に遭って、
お父さんとお母さんを亡くして、それで……。











―私が全部を思い出せるように、今日から日記を書こうと思う。
 朝起きて何を食べたとか、
 今日はこんなことがあったとか、
 そういうことを事細かにメモしていく感じ。
 それは毎日欠かさず続けて。
 そして毎日、このノートを読むの。
 そうすれば普通の人と何一つ変わらない生活が出来る。
 あなたならきっと大丈夫。
 私は、今日のあなたを信じてる。
 一緒に今日を生きましょう。