「おい、どうした?泣くと化粧が崩れるぞ」
「ごめっ、ちょっと思い出しちゃって……」
スプーンとフォークを置いて、
ぎゅっと拳を握り締める。
思い出すな。忘れろ。
忘れて前を向くんだ。
忘れたくないことは簡単に忘れてしまうくせに、
忘れなくちゃいけないことはどうしても忘れられない。
この矛盾がどうにもやりきれなくて、悔しくて、
惨めで、情けなくなった。
どうして私はこうなんだろう。
私はどうして、こんな病気になっちゃったんだろう。
どうして、何もかも上手くいかないんだろう。
しばらくそうして泣いていたけれど、
ようやく涙も引っ込んだ。
ぼうっとスパゲティを見て、
おもむろにスプーンとフォークを取った。
「食べられるか?残してもいいんだぞ」
「大丈夫。食べる」
なんだか申し訳なくて、私は無理やり笑ってみせた。
残ったスパゲティを全部食べきって、二人でお店を出た。
なんだか胸にぽっかりと穴が開いたように茫然と立ち尽くす。
そんな私に尚央は言った。
「少し話そうか」
手を引いて、尚央は歩きだした。
私はそれについていく。
尚央が私を連れて行った場所は、
デパートから少し離れた公園だった。
ベンチに私を座らせて、
近くの自動販売機で温かいココアを買ってくれる。
それを手にして二人で並んで座った。
尚央は自分の分のココアを一口飲むと、口を開いた。


