私はノートを抱えて、来た道を戻った。
帰る途中、ずっとあの人の顔が頭に浮かんでいた。
顔はかっこいいけど、あの服はダサすぎる。
それが面白くてついつい笑ってしまう。
あの人、かっこつけていたのか、
あれが素なのか分からないけど、すました顔してた。
颯爽と店に入って来て、「いつもの」を頼む。
その「いつもの」が何なのかは謎だけど。
そういえば座っている姿も綺麗だった。
服がダサいというあの一点だけなければ
完璧な男だったと思う。
何歳くらいなんだろう。
雰囲気は大人っぽいけど、
どことなく同い年くらいに思える。
うん、きっと大人びた高校生だ。
制服は着ていないのかな?
というか、この時間に高校生があんな場所にいるなんて不思議。
学校、真面目に行っていないのかな?
なんて考えていると施設に辿り着いた。
中に入ると、玄関先で床を雑巾がけしていた施設長がいて、
「おかえり」とにこやかに言ってくれた。
私も「ただいま」と言って部屋の中に入る。
テーブルの前に座ってノートを開いた。
さっきのことを書き記しておこう。
夕方になると、子どもたちが帰って来た。
親を失くしても元気いっぱいの子どもたちは
部屋に駆け込むとすぐに出て来て施設長にひっついている。
あのね、今日は学校でこんなことがあってね?
みんなキラキラした顔で報告するんだ。
楽しそう。
私もあんなふうに楽しく笑いたい。
私の幼い頃はあんな感じだったと思う。
きっと、事故に遭う直前まで。
今の私は、どうだろう。
訳が分からないまま、ただ一日が過ぎていく。
私は本当に、ちゃんと生きていくことが出来るのかな。


