「相変わらず仲良しだね、ふたりとも」

そう言うと、絵里の顔がふわっと赤く染まった。

遠田くんと絵里は、高校に入学してすぐにお付き合いを始めた。だからもう、付き合って2年になる。

明るくてショートカットの似合う美人な絵里と、知的で穏やかな遠田くんは、どこからどう見てもお似合いのカップルだ。

「見てて羨ましいなぁ」
「由衣も彼氏作ればいいじゃん!」
「そんなに簡単に出来ないよ」
「気になってる人は?いないの?」

うーん、と考えてはみても、そんな人どこにもいない。

「朝倉くんは?」

遠田くんからふいに飛んできたそのワードに、苦いものを飲んだような気になる。
その顔を見て、絵里が遠田くんを小突いた。

「朝倉くんは……ちょっと……」

高2の冬にやって来た彼は、転入してからというもの、なぜなのか私にずっと構ってきていた。

構うと言っても、話しかけたりしてくる程度だけれど。

でもそのお陰で、人気者に構われる私への女子からの視線が痛い。

だから、より一層人の目を避けて過ごすようになってしまった。
なのに。めげない彼は、粘り強く私と接触を図ってくる。

はぁ、とため息が洩れる。

「学校、行きたくないなぁ……」

絵里と遠田くんが、困ったように顔を見合わせた。