「だから、この問題はここをXと置き換えて……」
「登場人物のこの時の心情を表してるのはこの1文だよ」

「あのさ、2人共……」

不意に、絵里が机に突っ伏した。

「もう全っ然分かんないんだけど!!!」

夕暮れ時の教室に、絵里の声が響き渡った。
遠田くんがまたか、という顔をする。

「絵里、頑張ろうよ。あと少しだよ?」
「そのあと少しがしんどいの!休憩したい!」
「さっきも休憩したでしょ?」

わーわーと言い合っている絵里と遠田くんを見つつ、私は目の前に座って黙々とテキストを終えていく朝倉くんを見る。