「侑希が好きだ、絶対幸せにする。だから俺と付き合ってください」

それが 私たちの始まりだった。

君がそう言ってくれてから5年、私たちの今この時間は あの時描いた未来図のようになってる?

私には あの時の幸せが薄れているような気がする。
幸せにする。ってそう言ってくれたのは 廉 あなただよ。

「廉、おはよう よく眠れた?」

「………ん」

ピンポーン__
無機質な機械の音が鳴る。

「はーい」

『あ、こんにちは〜侑希ちゃん!紗良だよ!』

モニターに映るのは 見慣れた愛らしい顔の藤城紗良ちゃんだ。

あぁ、今日も来た。

「はーい どうぞ。」

私はボタンを押して鍵を開ける。
すると秒で部屋に入ってきた紗良ちゃん

「ねぇねぇ廉!!今日ね、前から話してた海に行こうと思うんだけど、行かない!?」

「うん…♪いいね。行こっか」

彼女は廉の小さい頃の幼馴染らしく 2年前からよくうちに来ていたので面識はあった。

廉は見ての通り、紗良ちゃんが来ると途端に機嫌が良くなり 私のことはまるで無視。

「ねぇねぇ 紗良ちゃんもどう?きっと楽しいよ!」

「えっ、と……私は……」

こういう時、私がいると廉はいつも不機嫌で 家に帰ってきたあとが怖い。

「別に、着いてくれば?」

チラッと廉を見ると 露骨に嫌そうな顔でそう言った。
ねぇ、なんで嫌そうな顔してるのにそんな風に言うの 廉。嫌なら嫌って、言ってくれればいいじゃない

「じゃあ…一緒に行かせてもらおうかな」

「わぁ、やった!!あ、昇くんも来るんだよ!だから4人で行こうね!紗良、先に下で待ってるから 準備出来たら降りてきてね!!」

すごく楽しそうに紗良ちゃんはそう言って出て行った。

「……さっさと準備しろよ」

「……うん」

急に声のトーンが低くなって、吐き捨てるようにそう言って 準備に向かうためか廉は自分の部屋へ戻って行った。

私も 早く準備しなきゃ。
どうせ昇がいるんだ、ならまだマシじゃないか。

昇……私と廉の共通の友達で、高校時代の同期で 3人でいつも一緒にいた。

オマケに廉と昇は仕事仲間で 芸能人として売れている真っ只中。

私と昇は小さい頃から一緒だったから、こうしてキラキラと楽しそうにしている二人を見てるのが本当に好き。

でも 紗良ちゃんが来てから、廉は変わった。
廉が家にいるときはほとんどの確率で紗良ちゃんが来る。

そして私はまるで空気みたいに2人はカップルのように仲良しで。

もはやどっちが彼女なのか分からないよ。

「海……か」

あらかじめ水着を着て、その上に普通の服を着て 着替えとか日焼け止めとかはカバンに入れて 準備をせっせと終わらせた。

やばい……もう廉外に出てる。

早く行かなきゃ

ガチャっと聞きなれた鍵の音を聞いて私はエレベーターで降りた。