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『カランカラン』

「こんにちは」

いつもお店に来るときはスーツ姿の彼が、珍しく私服だった。

「今日はお花を買いに来たわけではなくて、これを渡しに来ました」

「これは…?」

「今まで僕が買った花の写真です。それぞれの花の花言葉を考えていただければ、貴女の抱いていた疑問が解決すると思います」

「……疑問、ですか」

「僕がどうしてその花を買っていたのか。紫のパンジーやピンクのコチョウラン。そして、ワスレナグサ……全てがわかりますよ」

「はい。じっくり考えてみますね」

「ぜひ、よろしくお願いします。それでは失礼します」

「またのご来店をお待ちしております」

私が言い終える前に、彼は走って店を出ていった。