『カランカラン』

鈴の音がお客様の来店を知らせた。

それを合図に作業の手を止めて挨拶をする。

「いらっしゃいませ」

綺麗な顔をしたスーツ姿の男性。
男性のお客様は珍しくないけど、こんなに綺麗な人はあまり見ない。

真剣に花を見つめる表情に、より一層美しさが増していた。

「あの…」

「は、はい」

思わず見惚れてしまった……!
仕事に集中しないと!

「ピンクのチューリップをいただけますか?」

「…プレゼント用ですか?」

「いえ。自分用に」

「かしこまりました。では、こちらに…」

自分用ってことは、家に飾るのかな?

それにしてもピンクのチューリップって……

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」

男性はぺこりと軽く頭を下げて、帰っていった。