プライドをズタズタにされた、失意の声。

それでも彼は真実を認め、席に座り込んでうなだれた。


「……何だよそれ……」


杉浦は竜崎に詰め寄って胸倉を掴んだ。


「本当にそれでいいのか⁉ 秋人君の不正を証明できれば、君が一位になれるんだぞ! そもそも君は誰よりも秋人君のことを見下し、毛嫌いしていたはずじゃなかったのか⁉」

「ゴチャゴチャうるせえよ」


新二は自分の胸倉を掴んでいる青白い手を軽く捻った。


「ひぎっ!」

「相手がどんなに気に食わない奴だろうと、負けは負けだ。それを認められねえ女々しい男の方が俺は認められない。それに……」


そして、杉浦に顔をグッと近づけて彼は凄む。


「俺を一位に仕立てても、お前の『強制連行』は消えねえぞ」

「君は……やっぱり僕を排除する気でいたのかい……? 僕を排除すればどうなるのか、君が一番良く分かっているはずなのに」

「確かに俺だけだったらお前の傘下に入ってたかもな。俺には他人を上手く操って動かす力はない。本来ならこのクラスはお前の思い通りになってたはずだ。だが、世の中にはロジック通りにいかない時もある」

「ロジック通りに……いかない時……?」


理解できない、と声を震わせる杉浦の前で竜崎は胸を叩く。


「それは守りたいものが出来た時だ」

「――急に主人公みたいなこと言わないでくれよ。君は自分勝手な人間のはずだろう?」

「本当に救いようのない奴だな。お前はずっと俺を観察していたと言ってたが、実際は何も見えてない。俺は最初からたった一つの為にしか行動してねえよ」


そう言って、彼は斜め前の席を見た。

そんな彼の膝元に崩れ落ちながら、杉浦は呟く。


「ハハッ……そこまで君は彼女を……」

「理解して欲しいとは思ってねえ」

「ハハハッ……そんなバカげた事故みたいな理由で僕の正義が踏みにじられるのか……そんなことがあってはいけない……そんなことが許されてはいけない……!」


杉浦は立ち上がって駆けだすと、秋人に詰め寄って叫んだ。


「秋人君! 竜崎新二に『強制連行』を使え!」