翌日。

始業を知らせる電子音の素っ気ないチャイムが鳴ると、いつも通り『ペインター』先生が施錠された鉄の扉から現れて机に書類を広げた。


「おはよう。いきなりだが重要なお知らせがある。今日から少し授業カリキュラムが変わるからみんな心して聞くように」


前例のない宣告にクラスメートたちが戸惑う中、竜崎新二は全神経を集中させて彼女の言葉を待った。


「これから卒業までの間、二週間に一度定期テストを行う。テストの返却は一週間後に行われ、一位だった者は毎回他の生徒を一人指名し――」



「指名された生徒は、即座に『特別学級』から『強制連行』処分となる」



説明の意味がすぐには分からず、クラスにどよめきが走る。

いち早く理解できたのはやはり新二だけだ。


「加えて、クラス全体の定期テストの総合点が五割を下回った場合――その時点で『特別学級』の生徒全員を『強制連行』処分とし教室は閉鎖する。説明は以上だ」


――クラス平均点が五割を下回ったら全員が『強制連行』?

ますます喧騒が大きくなる中、新二はすぐさま大声で抗議する。


「――おい待てよビリビリサド女! そんな無茶苦茶なカリキュラムあり得ないだろ……!」

「なぜあり得ないのだ? 論拠を示してみろ」


タイマーが作動するのも構わず立ち上がった新二に、『ペインター』先生が問いかける。


「そもそも、そのカリキュラム通りに行けば九カ月で確実に十八人の生徒が『強制連行』処分を受けることになる……つまり、卒業まで生き残れる生徒はどう頑張っても七人ってことだ」

「え……? そんな……」

「な、七人だけ……?」

「そんな無茶苦茶な話があるかよ……!」


分かりやすく暴露されたことで、混乱が徐々にパニックに変わっていく。


「それだけじゃねえ……『強制連行』されるのは最上位成績者に指名された生徒だ。加えて定期テストのクラスの総合点が五割を切れば、全員が処分を受ける。ということは――」


そこまで言いかけて突然、新二は口をつぐんだ。


「どうした竜崎? それ以上説明できないのか? それとも――説明したくないのか?」