『二者面談を行います』
先生がそう言いながら“キリッ”と、効果音が成りそうな顔で眼鏡をくいっと、どこぞのドラマのように人差し指で直す。
今は朝の会の先生の話の途中。
『えぇ…』』』
クラスの大半が面倒そうな声を漏らす。
そして、隣も又、そうだった。
『“えぇ…二者面って、何で有るの?”って思わない?』
『思わない』
『どうして?』
『この世の中には必要だから』
『ふーん。つまんないの』
と、海は視線を校庭の窓の方に反らしながら言う。
『へ?』
『いや、知花ちゃんの友達には成ったものの、苦手な物とか、面倒な事とか知らないからさー。
その回答が優等生っぽくて悔しいんだよねー!知花ちゃんってさ!』
海は視線をこちらに戻して、わざとらしく私に笑顔を振り撒く。
『そうでも無いよ。
自分のためだけな事ばかりなんだから』
私は本当は海が言う程優等生なんかじゃない。
自分のためばっかだから。
『そんな事無いでしょ?
て言うか、案外君の事、俺、よく知らないみたい』
『え?そう?』
私は驚いた。
自分でも恥ずかしい位に情けなく泣いていた姿を見られたり、私の弱味をこんなにも知っているのは海だけだと思っていた。
だから、本人にそう思われていたのが意外だったのだ。
『君の好きな事も、逆に嫌いな事も…
俺、あんま知らない』
『だったら教えるよ』
『それはちょっと違う』
『ふーん』
そう返されると、何だか突き放されたような、私のが海の事を知らないような気に成ってくる。
『以上』
先生がそう言うと学級委員の男子が、
『規律。注目』
と、言う。
私達は立ち上がり、先生の方を見る。
まぁ、見てない人もそこそこ居るけど。
『礼』
私達は礼をして休み時間を始める。
しかし、私達の会話は終わらなかった。
いや、何が引っ掛かったので私が終わらせなかった。
『別に、私だって海の事、あんまり知らないよ』
『だったら教えようか?』
『それは違う気がする』
『俺と同じだな』
何だか空気が重く感じた私は会話を終えて、本を読む事にした。
違う意味で、又、本の内容は頭に入らなかったけれど。