「ねえ香奈、どうしちゃったのよ。おかしいよ」

香奈にやや遅れて土手を登りながら、のぞみが声を掛ける。

香奈は無言で、背中のリュックを背負いなおす。

ちょっと重い。

やがて土手を登りきると、香奈はリュックを下ろして肩をほぐし、のぞみを振り返る。

のぞみはようやく香奈に追いつき、荒い呼吸。

「香奈ぁ、みんなが香奈の事どう言ってるか、聞いたことある?
 いったいどうしちゃったの。
 いーかげん、ヤバイよ。
 めー覚ましなよ」

香奈は答えず、慎重に、ゆっくりと、細心の注意を払って、リュックの中身を取り出した。

香奈の手の中にあるのはボーリングの玉。

その美しさに目を奪われ、のぞみがはっと息を呑む。

彼が磨き上げ、そして香奈が完成させたもの。