昼下がりのにぎやかな食堂内。

香奈とのぞみはテーブルを挟んで向かい合って座っていた。

香奈の表情は明るい。

にこにこと楽しそうにサンドイッチをパクついている。

対照的にぶすけた顔ののぞみ。

机に肘をつき、そこに頭を乗せて先ほどから氷の解けたジュースの表面をストローでくるくる回している。

「ねぇ、香奈ぁ」

「んー? なあに?」

チラリと上目使いで香奈を見るのぞみ。

笑顔で見つめ返してくる香奈を見てため息を一つ。

「なによぉ。どおしたの」

「いや、なんか楽しそうだなーって」

「そお? フツーだよ」

「……フツーじゃないじゃん。
 香奈最近様子ヘンだよ」

「えっ……。
 へん……て、なにが?」

「……ヘンて言うかさ、最近どこ誘ってもなんかノリ悪いしさ。
 ……なんかあったのかと思うじゃん」

「ごめん……」

「別にあやまんなくてもいいけど。
 ……あのね、実はさ、
 ……うわさ、聞いたんだよね」

「……うわさって?」

「香奈のこと。
 なんかさ、香奈がね、あの例の“タマ男”のとこに入り浸ってるって言うの」

「……タマ男って」

「まさか、ありえないよね」

香奈の顔を覗き込むのぞみ。

「行ってるよ」

「! マジで! なんで!」

「なんでってことはないけど……」

「いや、やばいってそれ。マジで。
 なにやってんの!
 ……まさか、つき合ってるとか……」

「ちがうよ! そんなんじゃないから」

「そりゃまあ、あたしも彼氏見つけろとはいったけどさ。
 よりによって“タマ男”はないでしょ」

「だからタマ男って……。
 もう、ほんとにそんなんじゃないんだから」

「じゃなんで?」

「いや、別に……
 ただまあ、なんとなく。
 ……居心地いいし……」

「香奈ぁ」

のぞみはあきれた表情で、首を振りながらため息を吐いた。