「美結っ! 大丈夫っ?」

先ほどの宮殿のような部屋から出た律と、意識を失ったままの美結…

部屋から、出た瞬間…に、律が受けた傷や首筋に締め付けられた指の跡は、何事も無かったかのように…、消えていた…


事前に、悠斗たちに連絡していた律は、待ち合わせていた場所まで来ていた…

美結の身体を抱き上げている律は…

「熱中症かな? 疲れさせたのかも…ごめん…、
倒れちゃって…」

律に、そう言われた瑠奈は、美結の顔をのぞき込む…

「とりあえず、医務室に連れて行った方がいいかな?」

「っあ! そうだね。
お姫さま抱っこしてるから…、思わず…見とれちゃった…」

そぅ、またもや…ストレートな発言をする瑠奈に、律は呆れながら…

「なに、言ってんの?
とりあえず、医務室行ってから、状態によっては送ってくから…帰らせて貰うよ…」

そぅ、言い残し…医務室の方まで向かって行く…

その律の後ろ姿に…

「やばーい! さすが、王子~!
やることがイケメンっ!」

「なぁ、アレってホントに熱中症か?
顔色、良さそうだったけど…」

美結の顔色を目にし…、微かな違和感を感じた悠斗は、素朴な疑問を口にした…

「っえ? なに、言ってるの? 王子が、そう言うんだから~!」

「でもさ~、熱中症って…」

「もぅっ! 王子がそぅ言うんだから、そうなのっ!」

「…お、王子って、怖いよ。お前…」


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2人から、距離を置いた律は、医務室…ではなく、木陰の下のベンチに美結の身体を横たえた…

医務室の医師や看護師が目にすれば…美結が熱中症でないことは、一目瞭然だった…

「…三枝…、大丈夫か?」

しばらくし…、うっすら…と、目を開けた美結…

すぐ様、身体を起こし…

自分の顔をのぞき込むように見つめている律と、視線がぶつかった…

「っあ! あたし、どうしたんだっけ?」

動揺を隠せないでいる美結の反応に、律は、吹き出しながら…

「倒れたんだよ、忘れたの?」

その、律の言葉に…美結は、しばらく考えこみ…

「…え…? 覚えてない…っ」

「覚えてない…?」

そぅ…、美結の表情をのぞき込むように、見据え…律は、再確認する…

美結は、深く頷きながら…

「途中まで…、暗い通路を歩いてたのは覚えてるんだけど…、その後のことは…」

その言葉に、一瞬、安堵した…