《私は…
今度…、また…あなたと巡り会っても…

もう…二度と…、あなたを愛したり…しなぃ…


もぅ…、二度と…》


薄暗い…、暗闇のような闇のなか…

これは、現実なのか…?

それとも…夢なのだろうか……っ?

どちらなのか、分からない…ほどだ…


そぅ…、泣きながら言っている…彼女の声が聴こえた…


僕は…、彼女を…愛していた…はずだった……――



ジリリリリ……


けたたましく…、鳴り響く…煩わしい音…

その音に、引きずり込まれるかのように…戻された…
この…世界に…――


この物語の主人公…西園寺 律(りつ)
…は、自分の頬に、いつの間にかつたい落ちている波にも気が付かなかった…

が、胸の鼓動だけは、妙にリアルな感覚がした…



「…ッ律っ! 夏休みだからっていつまでも寝てないでっ!!

勢いよく開いたドア…、それと同時に、タオルケットをむし取られた…よぅだ…

「…あ~、なに?」

「ちょっ! なんてカッコで寝てるのよ?」

その、次の瞬間、引っ張がされたはずのタオルケットを投げつけられた…

「投げることないだろ?」

投げつけられたタオルケットから、ようやく顔を覗かせる…

目頭を擦りながら…、その方を見つめる…

大学生になり、家から出…一人暮らしをしているはずの姉の六花(りっか)だった…

ようやく上半身を起こした…その、顔をそむけている女性が頬まで紅潮させている…

内心、弟のハダカ見て…何を今更…と、思った…

「…なんてカッコ…って。。」
《パンツ、履いてるけど…っ!

いつもながら…姉の六花は、けたたましい…っ》



その、投げつけた…当の本人は、顔をそむけながら…

「もぅ、ハダカで寝るの、止めなさいっ!」

「姉ちゃん、いつ帰ってきてたの?」

そぅ、言った…途端、姉の六花は、俺の頬をつねりあげながら…

「1週間前よっ! アンタ、寝ぼけんのもいい加減にしなさいっ!
早く、支度してっ! 今日は、おばあさまの七回忌!で、早く! 親戚も来るからっ!」

「あー、分かったからっ!」
《【⠀早く! 早く!】って、オウムよりタチ悪…っ!》

と、心の中で軽く舌打ちした瞬間…

部屋を出て行こうとした姉がくるっと、振り返り…

「アンタ、お姉さまのことを【オウム】以下に云うんじゃないわよ?」

と、睨みつけ…出ていった…

それほ、まるで…ヘビに睨まれたカエルのようだ…

いゃ、その方がまだマシだ…


「…あ~、もぅ…っ!」

面倒くさ…と、思いつつ…身体を起こした…

枕元に置いてあったスマホにメッセージが入っているか、確認をする…

いくつかの店のメッセージとともに、悪友の佐伯 悠斗(はると)から入っていた…

その文面は…
【今日、三枝たちと会うけど来ない?】

悠斗の顔の次に、同じ高校のクラスメイトである…三枝 美結(みゆ)の顔が浮かんだ…