「ようこそいらっしゃいました、緑様。理央様がお待ちです」

「…はい」

一ノ瀬グループは日本でもトップの会社であり、海外にも名を轟かる程の力を持っている。

それに比べ、私達世良家は特に有名という訳ではない。知っている人は知っているが、知らない人は知らない。

知っていたとしても、”良い“印象は持たれていないだろう。

何故なら私達家系は、先祖代々身体を売って来たためであるーー

「緑ちゃん、待ってたよ」

「…」

この人…お方が一ノ瀬グループの息子、一ノ瀬理央である。

整った顔に高い身長、高い知能に高い地位、神は彼に二物も三物も与えておられるようだ。

「あの…」

「うん?」

「今日は…」

「うん、緑ちゃん先に帰っちゃうから家に呼んだ」

「…」

「家に連絡した方が“早い”と思って」

「…」

「それじゃあ、始めようか?」

私はこうして、彼に抱かれに行くーー


私達世良家は、表向きは一ノ瀬グループの一部になっているため、一ノ瀬グループに身体を売っていると知っている人達はごく僅かである。

しかし、世良家はその道では有名である。

そのため、一ノ瀬グループを中心に他の富豪達とも契約を交わしている。

そして彼、一ノ瀬理央が私のご主人様である。