ぶっきらぼうな彼の答えに、マイレイは愉快そうに笑った。

「そうか・・・・ならばジェスター・・・一つ聞いていいか?」

「なんだ?」

「・・・もしかすると、そなた、朱き獅子(アーシェ)の者のではないのか?」

「・・・・・・」

マイレイのその言葉に、僅かばかり押し黙って、ジェスター・ディグ(名を棄てた者)と名乗ったその青年は、緑玉の瞳を鋭利に細める。

一瞬、刃の如く煌いたその視線に、臆すこともなく、彼女は、その秀麗な顔を神妙な面持ちで引き締めて、再び、妖艶な唇を開くのだった。

「そなたの持つその気配は・・・・強過ぎる・・・」

「余計な詮索はするな・・・・場合によっては、女だろうと容赦はしない」

それは、冷静で落ち着いた声色で紡がれた言葉だった。

しかし、栗色の前髪の隙間からマイレイを見据える鮮やかな眼差しには、明らかな本気が含まれている。

マイレイは、僅かばかり困ったように蛾美な眉を寄せると、小さくため息をつきながら言のだった。

「そうか、余計な事を聞いた・・・すまなかった」

「そうしてくれ、女を斬るのは、流石の俺も気が引ける」

暖炉の中で赤々と燃え盛る炎に、異形と呼ばれる緑玉の瞳を向けると、彼は、手に持った杯から、蜂蜜酒を軽くあおったのである。

そんな彼の端正な横顔を見つめながら、マイレイもまた、手の杯から蜂蜜酒を口に含んだ。

「そなた、若いわりに随分と強者(つわもの)と見える・・・クスティリン族にも、そなたのような強い瞳を持つ者がいれば、私とてこんな場所に住む事もなかっただろうに」

「人より多く、命を手にかけてきただけの話だ、強者と言われるほどのもんじゃない」

どこか自嘲するように彼がそう言った、正にその時だった・・・