銀糸の髪が零れる首筋を伝う暖かな唇が、彼女の呼びかけを遮るように、妖艶に輝くその唇を塞いだ。

甘く触れる舌先。

白く滑らかな背中を辿る長い指。

窓辺に浮かぶ朧な満月の下に、白い粉雪が舞う。

淡く照らす月の光の中で彼女を見つめる、鮮やかで美しいその緑玉の瞳が、その心を囚えたまま離さない。

眩暈がする・・・

こんな思いに駆られたことなど、今まで一度もなかったはずだ・・・

差し伸ばした両手でそっと、彼の精悍な頬を包みこむと、彼女は、その瞼に接吻(くちづけ)したのである。

「そなたの瞳は美しい・・・・でもこれは、深い哀しみの色だ・・・」

その言葉には何も答えぬまま、彼は、僅かばかり強引にその細い腰を抱いた。

再び、息を詰めた彼女の白い肌が、淡紅色に上気する。

秀麗な頬にかかった銀色の髪が、窓辺に射す月灯りの中でふわりと揺れた。

両腕を彼の首に絡み付けながら、彼女は、漣のように打ち寄せる甘い感覚に瞳を細め、真っ直ぐにこちらを見つめる鮮やか眼差しを受け止める。

自ら望んで、この魔性の瞳に囚われたのだ・・・・

悠久の時を越えて蘇ろうとしている、【炎神】の影を宿したこの青年の、この禍々しい程に美しい瞳に・・・

宵闇に射し込む金色の月光が、薄暗い部屋の中でたゆたうように揺れる・・・

紺色に浮かび上がる高峰の山々から吹き降ろす、凍てついた風が、葉の落ちた森の木々を揺らしながら、通り過ぎていった・・・・