しかし、マイレイは妖艶な唇で笑ったまま、何故か、すぅっと両手を伸ばして、彼のその精悍な頬を、しなやかな指先で触れたのである。

そんな彼女の銀糸の髪が、凍てついた風に跳ね上がった。

彼は、凛々しく端正な顔を怪訝そうな表情に満たして、押し黙ったまま、彼女の綺麗な顔を凝視する。

彼女は、そんな彼の鮮やかな緑の瞳を見つめたまま、更に言葉を続けた。

「私は、根っからの男嫌いでな・・・でも、何故だろう・・・・今私は、そなたのその異形の瞳に、囚われたいと思っている・・・」

「何を言ってるんだ?おまえ・・・?」

「解らぬか・・・・?」

「・・・・・骸が転がる最中で、吐くような台詞じゃないと思うが?それに、俺はただの行きずりだぜ・・・・?おまえ、一体どんな女だ?」

「そなたの目に映る私が全て・・・・」

「・・・・・おかしな女だな、おまえ?」

西に沈み行く落日が、薄暗い森の中に最後の光の矢を放ちながら、静かに高峰の山々の彼方へと落ちていく。

薄く笑った彼の唇に、その妖艶な唇を押し当てた彼女の銀糸の髪を、白い雪の花を散らす風が浚って、音も無く通り過ぎて行った。