「ほら、着いたよ? いつまで座ってるの?」

先生の安全運転で走ること、二時間。着いた先は____遊園地。

「い、嫌です……だって、ここ、いっぱい人が」

「レイが僕の行きたいところだって言ったんだから、責任もって付き合ってよ」

「でも……!」

人混みが嫌なわけではなくて、先生と歩いているところを見られるリスクが高いところは、避けたいだけなのに。

先生は、私のことをわかってくれない。

先生をじっと見つめると、彼はあからさまにため息をこぼす。

「何のために、僕がさっきプレゼントをあげたと思ってるの?」

「……え?」

「開けてみて」

そう言われて、開けてみる。つばの広い、顔のすっぽり隠れる帽子だった。

そこまで考えてたなんて、想像できずに固まる。

「それ被ってならいいでしょ? 早く行こうよ」

諦めたように私は帽子をかぶって、外に出た。

チケット売り場に並んで、券を購入すると、先生は嬉しそうに笑った。

「僕、遊園地久しぶりなんだよね」

マップを手にした先生は、なんというか童心に帰ったかのように無邪気だ。普段の大人っぽさは、あんまりない。

「どこからまわる?」

「先生の、好きにして__」

「僕はレイが回りたいところに行きたい」

私が上手く会話をかわそうとしたことに、先生はやはり気づいた。

でも、言いたくない。遊園地が初めてだから実は今テンションが高いなんて。

だからいつも通りの声で返す。

「……じゃあ、この、ジェットコースター、行きたいです」

「ジェットコースター乗れるんだ?」

「えっ……あ、はい」

本当は乗れるかわからないけれど、多分大丈夫だろう。頷いておこう。

先生は、行こうか、といつも以上に楽しそうに笑って、私の手に指を絡めた。

「レイと一日中一緒なの、すっごい嬉しい」

その手の温かさに、私は少しだけ落ち着いたような気持ちになって、恐る恐る握り返した。

何か聞かれたらどうしようと思った。うまい言い訳は考えてない。

だけど先生は何も言わずに、少しだけ強く握り返してくれた。

__その熱が私をダメにするまで、あとどれくらいだろう。