しかしさすがにこれには黙っていられなくなったのか、それまで黙っていた永倉や藤堂などが止めにはいった。



「ちょっと!
冗談よしなよ瑠璃ちゃん!」


「いくらなんでも切腹なんて………

まず武士でもないんだよ!?」



「二人とも、静かになさい。これは瑠璃ちゃんの覚悟です。
私たちがとやかく言う資格はありません。土方さんにまかせましょう。」




神妙な面持ちで土方と瑠璃を見据えたまま、慌てる二人を制したのは沖田。

こうして全てが土方に委ねられた。



「お前、自分が何いってるかわかってんのか?」



「はい。

せっかく近藤さんが手配してくださった江戸へのつてを、このような形でお断りしたいというのは我が儘だとは百も承知です。


しかし、
私はこの身をもって、私を養女としてくださった近藤さんに、恩返しがしたいのです!」



蒼く深い瞳の中には何か強いものが映っていた。






「……わかった。
今の言葉、絶対に忘れんじゃねぇぞ。



三月だけ、お前に時間をやる。やるからには途中でやめることは許さん。
だけどな、剣術はそう易々と身につくもんじゃねぇってことを肝に命じとけ。いいな。」




「はい!
ありがとうございます!」




「言っておくが、俺は約束を破る奴は嫌いだ。


女だからって容赦はしねぇからな。」

「はい!」






こうして、瑠璃の江戸行きの一件は流れたのだった。