「…玲央?」


もう一度顔を覗き込むようにして
玲央に声を掛けた時だった。


―――チュッ


小さいリップ音と共に
唇に感じた温かくて柔らかい感触。


キスされたと気付くまで
そう長い時間はかからなかった。


ビックリして玲央を見ると
さっきの私のように
ニヒヒといたずらが成功した喜びを
隠せないと言った表情をしていた。





「…お返しだよ。」


そう囁くと
右の口角だけを
キュッと引き上げて
妖艶に笑った玲央に
顔が熱くなった。


夕暮れの校門を
少し過ぎた道端。


幸いにも
人がいなかったから
よかったものの、
こんな所を誰かに見られていたら
きっと恐ろしい事に
なっていたに違いない。