…言い訳を聞きたくなかった。
自分からここまで連れてきて
勝手だとは思うけど、
いざ、玲央を目の前にしたら
何があったのか聞くのが怖くなったんだ。


「…凛。」


玲央の切なそうに
私の名前を呼ぶ声が
やけに耳に響いた。


涙が出そうになるのを
グッと堪えて一歩進んだとき、
またさっきと同じ。
ムスクの香りが鼻を掠めた。


「本当にごめん…。
凛との約束を忘れたわけじゃ
ないんだ。
凛たちのクラスよりHRが早く終わって
廊下で待ってた時に
女の子に声を掛けられたんだ。
一緒に来てほしいって。」


聞きたくないのに…
何故か玲央の声を
しっかりと捉えている。


「5分でいいからって…。
だから凛たちが終わるまでなら
って着いていったんだ。」