階段を下りて、
店への扉を開く。


いつも誰かしらいる店内。


今は、誰もいない。


微かに香る珈琲の香り。


ガチャと硝子のたてる音が
静かな空間に響いた。


カウンターを回り込むと、

君が

そこにうずくまっていた。


割れた、サイフォン。


「馬鹿…何してんのよ。」


割れた硝子に伸ばされる素手を、
引き寄せる。


驚いたように、向けられた顔。


頬を伝う水跡に、

息を飲んだ。