「あの……さ、環くん」


「あ?」



小春日和の今日は、朝から絵の具を垂らしたような澄んだ青の空が広がっていた。


環くんは閉鎖的な校舎内にいるのがあまり好きではないらしく、昼休みはいつもどこで手に入れたのか分からない屋上のカギを使って、立ち入り禁止のこの場所を貸し切っている。


小心者の僕は、最初こそ反対したものの、今はこうしてこの場所の居心地の良さをお裾分けしてもらっているわけなのだが……。



「えっと……それ、そろそろ聞いてもいいかな?」


「それって?」


「あの……その女の子についてなんだけど」



僕は、あぐらをかく環くんの膝の上にちょこんと座り、環くんの首に腕を回してうっとりしている美少女を指差す。


そう、実はこの環くん。


休み時間や空き時間を一緒に過ごそうものなら、もれなくいつもこの美少女がついてくるのだ。


ついてくるだけならまだいい。


この美少女、まるでコバンザメの如くいつも環くんに密着していて、そう簡単には離れない。


今も。



「……環くんのかほり……」



とか恍惚の表情で環くんの制服をスーハーしているから、つい僕は「ひぃ!」と悲鳴をあげそうになってしまった。