さっきのはキスっていうんだよ?環くん。


キスっていうのは、好き合っている者同士がするものだよ?


環くんは、田中さんのことなんとも思ってないんだよね?


だったらあんなこと、していいはずがない。


こんなの……こんなの……。



“環くん、見損なったよ”



そう言おうとした時だ。



「……付き合えるわけねーだろ」


「……え?」


「あいつと付き合ったりなんかしたら、こんなもんで抑えられる自信がねぇ。多分、あいつがヤダっつってもやめらんねぇ」



へ?



「バカみたいに大事なんだよ。美空だけは、絶対に傷つけたくない。そんなことになったら、俺は俺を許せねぇ」



それって……つまり……。



「た、環くん、田中さんが好きなの!?!?」


「……うるせー山田」



ほんのり頬を赤らめ、僕の頭を軽く小突いて先を行ってしまう環くん。


僕が呆然と立ち尽くしていると。



「ややや山田先輩!!!さささささっきの!!!みみみ見ました!?!?見てましたよね!?!?」



興奮した様子の田中さんに捕まってしまって。



「あれって、あれって、キスでしたよね!?いつもの私の妄想とかじゃないですよね!?!?環くん何であんなことしたんだろぉぉぉ!?!?ああぁぁぁぁぁ!!!」