さすがの僕も居ても立ってもいられなくなって、彼女達の方に一歩踏み出した。


その時だ。



「美空」



風のように、環くんが僕の横を駆け抜けていった。



環くんは、まるで視界に入っていないかのように内田くんの横を通り過ぎ、田中さんの前に立つ。



「環くん……?」



それから、ポカンと見上げる田中さんの顎をすくい上げると。



──────ちゅ。



軽いリップ音を響かせて、その唇にキスをしたではないか。





え。



ええぇぇぇぇぇぇーーーーーっ!?!?




完全に目が点状態の内田くんに鋭い視線を向けて、環くんはさらに追い打ちをかける。



「こいつに手出していいのは、俺だけだから」



この環くんに勝てると思うヤツがいたら、間違いなくそいつは正気じゃないと思う。


絶対的な環くんの迫力と、目がくらむほどの格好良さに、完全に意気消沈した内田くんが蚊の鳴くような声で「す、すみませんでした……」と言ってトボトボと去っていった。


一方、田中さんは、立ったまま意識を失っている模様。



そんな二人に背を向けて、環くんが何事もなかったかのようにこちらへと戻ってきたもんだから、僕は無意識にまたこの質問をしてしまった。



「た、環くん……。環くんは、田中さんと付き合ってないんだよ……ね?」


「だから、付き合ってねぇって言ってんだろ」


「じゃ、じゃあなんであんなこと……」