そんな曖昧な感情を持っていたが、12月の中旬、私はかつてないほどのスランプに陥った。


仕事でも、趣味で行っている教室でも、家族とのコミュニケーションのとり方でさえも全て、「何もかもうまくいかない」気しかしなかった。


周りから見れば出来ていたのかもしれないが、私自身は何も出来ていない、誰の役にも立てていない、そんな負の感情に支配されていた。


誰かに話せば楽になるかもしれないとは思うものの、話したって何も解決しない、人を不快にさせたり、困惑させたりするだけだ、と自分のプライドの高さも相まってなかなか人に悩みを打ち明けることもできなかった。


スランプの真っ只中、仕事はなくならないわけで、3日に一回ほどある坂本君との仕事の話し合いの日、今まで何も言ってこなかった坂本君が、私のスランプに気付いたのか「今日本当に駄目そうだね」と言った。


使えない奴だと思われたかと少し傷ついた。


「汐見さんが落ち込んでても、俺、何も出来ないからなぁ……。」


人の心の悩みを救ってあげることはできない、内部には干渉できないからという意味だったと思う。本当にそのとおりだと思うと同時に、なぜだか少し寂しかった。


絶対に人に涙なんて見せてやらない、と信念にしている私は、よほど参っていたのか目が潤んできてしまった。そんな無様な姿は見せまいと顔をそむけ目を乾かすように何度か瞬きをした。