ーーそんなの、ありえない。


途端に、会話が弾まなくてもどうでも良かった今の状況がとても気まずく感じた。


しかし、それも一瞬で。


あっけなく数学研究室に着いたのだった。


「ありがとう、助かった」


清川先生は私に向かって微笑んで、数学研究室の扉を開ける。


「プリントは棚、問題集はそっちの机にね」


「…はい」


控えめに数学研究室の中に入りながら、私はかろうじて返事をする。


声が震えていないか、心配だ。


重たい問題集の束を指示された机の上に置こうとしたその時、私はバランスを崩した。


「おわっ…!」


小さく情けない悲鳴を上げ、ぐらりと後ろに倒れそうになる。