無事に発注も済み、MSMさんとの仕事もとりあえずはこれで今回は終了となった。


「安尾さん!お疲れ様です」


営業の江藤がいつもより高いテンションで研究開発部までやって来た。

例の「お疲れ様でしたの会」が今夜行われるので、その件についてだろう。



「開発の今日の飲み会の出席確認いいすか」

「ああ、悪いな。幹事までやってくれて助かった」

「いやー、予約だけですし大した事してませんて。お、今回は八嶋も出席っすか」


うちの部の出席者のリストを渡すと、前回は不参加だった八嶋の名前に気付いた。



「もしかしたら次は八嶋に引き継ぐ事になるかもって部長が言ってたから、まあ出ておいて損はないだろうしな」

「え、次引き継ぐって早くないですか?すげー、八嶋若いのに順調に出世コースっすね。今日の飲み会、主役差し置いてめっちゃモテるじゃないですか」

「そうだな。これで俺に変な絡みが来なくなると思うとホッとするよ」

「前回のあの中村さんと佐伯さんの絡み方はエグかったっすもんねー」


八嶋には絶対変な事は言えないだろうし、八嶋も八嶋でかわすスキルが高そうだ。あいつなら大丈夫。申し訳ないが八嶋には、MSMの肉食女性社員への生贄となってもらおう。



……俺は俺で、決めた事がある。

今日の飲み会で彼女に、指輪の存在は嘘だと説明しよう。

みっともないとかイタイ奴とか、だから何だよとか思われてもいい。
彼女に何とも思われてない事も分かっている。


もう受け身で、人任せにするのはやめよう。