17時15分。定時を迎えたが、彼女からの連絡はない。


彼女の事だから明日の午前中といったら必ず時間までに仕上げてくれるだろう。

でも何か引っかかる。


「安尾、どっか寄ってく?」

「あ…すいません、ちょっとMSMさんに行ってきます」

「今から?頑張るなー。何か手伝う?」

「ありがとうございます、でも気持ちだけで。ちょっと気になって、迷惑かもしれないですけど様子見に行ってきます」

「おお、何かあったら遠慮なく言えよ。俺いつもの店にいるから」

「ははは…ありがとうございます」


何だかんだ面倒見のいい先輩に感謝しつつ、MSMさんのオフィスへと向かった。

ビルの2階がオフィスなので、エレベーターを待ってる時間も惜しくて階段を駆け上がった。


「今日どこ行く?」

「最近できたイタリアン。前に友達が行ったらしいんだけどよかったって」

「えー楽しみー」

「てかさっき百合川さんに仕事してけって言われたんだけど」

「まじあり得ないよね、先輩でもないのに。つーかデザインやり直しとかまじ無理。する必要なくない?あの会社ってそこまでの会社じゃないじゃん」


佐伯さんと中村さんの声がした。

彼女はさっきの電話で彼女達を説得するような事を言っていたが、どうやらこの様子だと効かなかったらしい。