「……俺、梅ちゃんはそういう事に慣れてるし、その過去にくだらない嫉妬をした。思ってもない事を言って梅ちゃんを傷つけた。最低だった。本当にごめん」

「……うん。正直あれはかなりダメージ受けた」

「ご、ごめん!……あの、この機会に1つ、聞いてもいいですか」

「何?」

「……梅ちゃんは、俺のどこを好きになったの?」


不安そうな目で私を窺って聞いてくる彼の様子は、子犬の頃の叱られた後のムッちゃんを思い出した。


飼い主に似るというけれど、もしかしたらムッちゃんは、拾った安尾くんに似ているのかもしれない。


「わからない」

「え!?」

「わからないよ、気づいたらいいなって思ってて、ずっと見てたんだよ。好きだと思う事は、数え切れないほどある」

「…あ、そっか、うん」


顔を真っ赤にして頷く安尾くんを見て、それすらも愛おしく感じる。




「……安尾くんの、優しいところが好き。仕事とか他の事じゃすごく頼りになるのに、私の事になると子どもみたいになるし。でも、そういうところも昔から好きだったんだよ。言い出したらきりがないくらい好きな部分がどんどん出てくるし、日によって変わるし。私は、安尾くんをずっと好きで、嫌いになんてなれない。
だから安尾くん自身の事、そんなに悪く言わないでよ」

「…梅ちゃん」

「安尾くん、私が慣れてるって言ったよね。慣れてないよ。慣れてるわけないじゃん。こんなに好きになって嫌われないように必死なの初めてだよ。もう逃げられないように必死だよ、こっちは」


また子どものように思った事が全て溢れて、出て来てしまう。

呆れられるだろうか。

不安にかられながら隣を見ると、突然安尾くんは立ち上がって、私の目の前で直立した。