安尾くんから、誕生日の日に近所の公園で待っているとメッセージが来た。
あれから安尾くんは連絡もしてくれるし何度も家まで来てくれた。
自分がこんなに子どもっぽいとは思わなかった。
仲直りをしなきゃと思うのに、いい年になって素直になれない。
今まではちゃんと落ち着いた大人になる為に出来ていたつもりなのに、安尾くんを前にすると、私は高校生の頃のままのように思えてしまう。
感情に任せて安尾くんを責めてしまった事、ちゃんと謝らないと。
そして、私は安尾くんが思ってる以上に安尾くんの事を好きだと、ちゃんと彼に伝わるように話さなければ。
言われたとおりに金曜日の夜公園に行くと、東屋の下で既に安尾くんが待っていた。
6月の梅雨の季節。
さっきまで雨が降っていたので、土の匂いがよくわかる。
ぬかるんだ地面を踏みながら東屋まで行くと、安尾くんがほっとした顔で「梅ちゃん」と振り向いた。
「……いつも連絡してくれてありがとう。出なくて、ごめん」
「いや……俺が酷い事言ったから。それなのに今日、来てくれてありがとう」
二人の間に、沈黙が流れる。
私がベンチに座ったので、安尾くんも隣に腰を下ろした。
空間を開けて座るかと思ったのに、彼は迷う事なくすぐ隣に座った。
……こういうところだよ。
私が本当に不安を感じている時に、安尾くんは当たり前の様に安心させてくれる。
きっと彼は無意識なのだろう。普段私の前ではヘタレのくせに、本当にごくたまに、こうやってピンポイントで私のツボをついてくる。
だから私はずっと、安尾くんの沼にはまっているんだよ。


