クリスマスイブまであと3日。
安尾くんにイブかクリスマスに会いたいとLINEをしたら、一日すぎて、「いいよ」と返事が返ってきて、イブに会う事になった。
その日私は生理の2日目で、生理痛に耐え切れず、学校を早退した。
力ない声で「ただいま」と家のドアを開ける。
父と母は仕事からまだ帰っておらず、リビングに兄と安尾くんがいる様だった。
安尾くんの顔だけ見たいなと思い、リビングのドアに手を掛ける。
「ヤス、童貞脱出できた?」
「…いや、まだ」
「何だよ、もっとガンガン行けよ。脱童貞すんなら、梅がちょうどいいっつったろ。変に緊張すんなよ、同い年とか年上相手に緊張するより、梅くらい年下だったらヤスも大丈夫じゃね?」
兄の馬鹿みたいに大きい声がリビングから漏れて聞こえて、手を止めた。
何だ、そういう事だったのか、と、自分でも驚くほど冷静に、他人事みたいに感じた。
嫌われてるとは思わないけど、恋愛感情で好かれているとも思っていなかった。まさかこの前朝子に憶測で言った事が間違ってなかったとは。むしろヤリ目的だとは、それより酷い。
でも、安尾くんなら何だってよかった。
安尾くんと付き合えるなら、そばに居られるなら、何だっていい。
玄関のドアを静かに開けて、近所の公園でひっそりと泣きながら、そう思った。


