ー屋上ー

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

冷たい風が強く吹いている。

1人の少女がフェンスを乗り越え、ギリギリの場所へ立つ。

強く…強く…吹いている風が肌に触れると痛く感じる。

少女は、下を覗き込み「うわっ」と一言だけ呟いた。

ここから落ちたら一瞬で終わりだな。

まっ、これから落ちるんだけど。

少女は、そんなことを考えながらゆっくりと座る。

「この世界ともこれでおさらばか…」

ちょっと寂しいな。

じゃあ止める?

いや、ここまで来て止める気にはなれない。

ピロピロッ

メールが来た。

『着いたよ。今から、屋上向かうから!』

来たんだ…。
来ないかと思ったよ…。

少女は、悲しそうに…でも、嬉しそうに笑う。

この子に最後に会いたかったから。

この子の目の前で死にたかったから。

バンッ!

「優衣!」

荒々しい音を立てて、扉が開く。

後ろを振り返ると、そこにはかつての大親友が居た。

「待ってたよ…。遥。」

「そこで何してるの!?危ないよ!戻っておいで!」

「んー?やだーw」

「やだって…。お願いだから!戻ってきて…!私が悪かったなら謝るから!」

私が悪かったなら…?

それって…実際には悪いと思ってないってことだよね。

そんな嘘の謝罪なんかいらない。

でも…助かったよ。

「ふふっ。ありがとう。これでやっと…決心できたよ。」

「ぇっ?」

私は立ち上がって後ろを見る。

そして、大親友だった遥にある言葉を伝える。

「今までありがとう。遥。大嫌いだったけど、大好きだったよ。」

そう言って、私は後ろに体を倒す。

私が最後に見たのは、青ざめた顔で泣きながらこっちに手を伸ばす遥だった。