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 バレンタイン当日。

 世界一の幸せ者といった顔をした理央が、手作りのクラシックチョコレートケーキを持って来ていた。後から登校して来た尚太に早速そのケーキを渡す。

「横野、これ」

「なんだ?」

 箱を開けてケーキを見ると、

「オレぁ、甘いモンは嫌いだ、つっただろーがっ! いらん」


 えっ⁉


 と、あっさり言われてしまい、言葉が出ない理央。今迄と変わってない尚太の態度にショックを受ける。

「おっ! ケーキじゃん。ナオ、これもらったの?」

「いいなぁ横野、オレにも分けろよ」

 周りにいた男子生徒が、尚太の机の上にあるケーキを見て冷やかした。

「羨ましいなぁ」

 と、一人の言葉に、

「何が羨ましいだよ。この女は浮気性だぞ。昨日もどっかの男と会ってたぞ」

 と返し、それで周りが笑った。


 ヒェェェーーーッ‼‼‼


 尚太のその言葉に、理央は全身の血の気が退いて行くのを感じた。


 夢? 夢なの? 昨日のあれも、あの時の笑顔も、幻? もしかして…あたしの勘違い? 今迄と何も変わってない??


 化石の様に固まり、生気を失った目で尚太達のやり取りを見ている。

 周りが騒いでいる中、尚太は理央の作ったケーキを一摘みして、口に運ぶと、

「バーカ。泣くなよ?」

 と言って、あの時と同じ笑顔で理央のおでこを小突いた。

 理央は驚いて、小突かれたおでこに手を当てた。耳まで真っ赤になっている。そして自分に向けられた尚太の笑顔に、やっぱり見惚れるのだった。




                                       END♡