クールなアイドルの熱烈アプローチ

「陽菜ちゃんっ!こっちに来てー!!」

「顔ちっちゃーい!」

「背高ーい!」

「握手してー!!」

「サインしてーっ!!」

大きな声を出して腕を目一杯伸ばしてくるギャラリーに、陽菜は握手をしながら、ありがとうございます。と笑顔で応えていく。
暫くその行為を繰り返していると、堀原が腕時計に目を落として時間を知らせた。

陽菜がギャラリーに深々とお辞儀をしてその場を去ろうと踵を返すと、突如腕を掴まれ強い力で後ろに引っ張られた。

「きゃあっ!?」

「っ!?」

陽菜の悲鳴に気付いた堀原が振り返るが、すでに陽菜は帽子を被っただけの大堂に後ろから抱きしめられて身動きがとれないでいた。

「陽菜ちゃん、お疲れ様。
早く仕事終わらせて俺の家に帰ってきなよ?待ってるから」

周りに聞こえるくらいの声で大堂がそう言うと、一瞬回りが静かになるが、すぐに騒ぎ出した。

「ええっ!?
陽菜ちゃんと恭矢君ってそんな仲だったの!?」

「嘘っ!!信じられないっ!!」

ざわめきと共にスマホを陽菜や大堂に向けて写真を撮り、そのまま何か操作している人の姿も多々あった。

陽菜は今、自分の身に何が起こっているのか理解が追い付かず唖然としていると、陽菜の耳に顔を近づけた大堂が小さく呟いた。

「俺の言うことを素直に聞かないからだよ。
これでもう、君は終わりだ」

その言葉を理解すると同時に、陽菜と大堂は堀原に無理矢理引き剥がされた。

よろける陽菜をしっかり抱き抱えた堀原はロケバスに向かって足早に歩き出すが、陽菜は耳をつんざくような悲鳴がしっかりこびりつき頭から離れず暫く放心状態だった。