クールなアイドルの熱烈アプローチ

撮影は順調で、ギャラリーからの声援もあり陽菜は本当に久しぶりに楽しく仕事をしているようだった。
その様子に安堵した堀原は隣に立ったスタッフに気付き、視線を向けた。

「秋村さん、いつもの笑顔に戻ってよかったですね」

「……ご心配おかけしてすみません」

いつも陽菜の髪をセットするヘアメイクアーティストが陽菜に聞こえないように小声で呟き、堀原は謝罪した。

「みんな心配していたんです。何かあったんじゃないかって。
そして、原因はあの人じゃないかって……」

名前を出さないが、困惑した陽菜の周りにしつこいほど現れる人物を数多くのスタッフが目撃していた。
陽菜の元気のない原因がその人物、大堂だと殆んどの人が思っていたことは堀原も知っている。

「みんなで言ってるんです。
秋村さんを護ろうって」

「秋村を?」

「結構みんな秋村さんに癒されてるんですよ?
小動物みたいにおどおどしてた時の秋村さんの動きと、みんなに馴れてきた時に楽しくお話ししてくれる笑顔に」

「……ありがとうございます」

堀原が周りを見てみると、陽菜の周りのスタッフもみんな笑顔だった。
本当に陽菜は周りに恵まれていると、堀原は柔らかく目を細めた。

撮影が終わり、陽菜が堀原の元へ戻ってくるとすぐに肩にコートを掛けた。

「堀原さん、あの、せっかく来てくれてるので少しだけファンの方と握手とか……してみてもいいですか?」

陽菜からの初めての申し出に堀原は驚く。
人見知りの彼女からしても、初めて会う他人に近付くなど初めてのことだろう。

「……俺も傍にいるが、気を付けろよ?」

堀原の言葉に陽菜笑顔で、はいっ!と返事をした。