クールなアイドルの熱烈アプローチ

Kaiserのライブツアーも最終となる今日。
陽菜は初めての野外撮影の為、ギャラリーもたくさんいる中でのロケに緊張していた。

「秋村さん、すごい人ですね!
みんな秋村さんを見に来たんですよ?」

興奮した様子の笑顔で話しかけてくるカメラマンに陽菜の顔は強張っていた。

「わ、私……上手く動けるでしょうか……?」

陽菜の人見知りもあがり症も治っていない。
いつもの顔見知りのスタッフ達だけで行うスタジオでの撮影とは違ってこんなにたくさんの人の中での撮影なんて、下手したら動けなくなるんじゃないかと陽菜は前日から眠れないほど緊張していた。

「みんなの前で喋る訳じゃないですから大丈夫ですよ!それに、みんな秋村さんのことが好きで来たんですから!
ほら、騙されたと思って試しに手を振ってみてください」

「て、手を……?」

辺りをチラリと見回した陽菜はギャラリーの中でも最前列にいる二人組の女性に気がついた。
以前、変装した陽菜の前で“最後の一冊”だと言いながら雑誌を買ってくれていた人達だった。

そっとその人達に向かって手を振ってみると、その二人はもちろん、回りの人たちも一斉に歓声を上げて笑顔で陽菜に向かって手を懸命に振り返してくれた。

「すごい……」

「これが今まで秋村さんが頑張ってきた証拠です。
多少あがっちゃって失敗しても大丈夫ですよ。
そんな秋村さんのことを、ここにいるみんなは受け止めてくれます」

その言葉に陽菜は嬉しくなり、久しぶりに笑顔を見せた。