クールなアイドルの熱烈アプローチ

「困るんですよね、堀原さん。
約束は違えないようにしてもらわないと」

『……申し訳なかった』

「ま、今回は陽菜姉にも非があったけど、次はないですよ?」

『分かった』

朝陽は堀原との通話を終わらせると、そのまま指を滑らし電話をかけた。

『……朝陽君?』

「勇人さん、お疲れ様です。
今少しだけいいですか?」

『本番前であまり時間はとれないが……』

勇人の声の後ろの方から音楽や会場、スタッフのザワザワしたり慌ただしい声が聞こえてきた。
本当は電話する時間もないくらい忙しいのだろうことを思うと朝陽は申し訳なく思った。

「大堂が本格的に動き出したらしくて陽菜姉の様子がおかしいです。
もし何かあったら勇人さん、陽菜姉を頼めますか?」

『……分かった、必ず』

「ありがとうございます。ライブ頑張ってくださいね。
……そして早く、帰ってきてあげてください」

それだけ言うと通話を切り、朝陽はスマホを強く握りしめた。
帰る予定の時間よりかなり早く堀原に連れられ帰ってきた陽菜は朝陽に困ったように笑いかけたようだったが、全然笑えてなくて、顔色も悪かった。

なんとか普段通りの生活をしていたようだったが、日課である二人の話をすることなく陽菜は自室に戻っていった。

最初に陽菜から大堂の話を聞いた時から悪い予感はしていた。
一般人では護りきれないと無力な自分を悔しく思いながら、朝陽は勇人がライブを終え戻ってくるのを切望していた。