クールなアイドルの熱烈アプローチ

「良くない噂を聞いた」

『良くない噂、ですか?』

ライブツアーの移動中、大堂の事で勇人は陽菜に電話をしていたが、久しぶりに聞く声は普段通りで別段変わった様子は見られなかったことに少し安心していた。

「君が、誰かに狙われてるって」

『えっと……狙われてる……かはわかりませんが、今日堀原さんから共演NGになった方のことを聞きました。
ちょっとだけ苦手で怖いと思ったことがある方だったので、少し安心しました」

「……油断しないで。
脅すわけではないけど、偶然を装って会いに来ることはいくらでも出来るから」

『同じことを堀原さんにも忠告されました。
気を付けますね』

どうやら堀原が大堂を警戒していると察した勇人は一つ息をついた。
そして、今自分で言った言葉をもう一度呟いた。

「……偶然、か……」

『越名さん?』

「俺も、君に会いたい。
偶然にでも……」

『そ、それは……偶然じゃなくて、いいんじゃないでしょうか……』

消え入りそうな声で呟く陽菜は恐らく今、真っ赤な顔をしているのだろう。
その様は誰が見ても愛らしく思うはず。

ーー早く、彼女を自分のものだけにしたい。
その為には早く、彼女にまとわりつく虫を排除しなければ……。

暫く話した後に通話を切ると、勇人はスマホを持ったままの手をゆっくり下ろした。

ライブツアーもまだ残っている。
こんなにも誰かに会いたいと渇望する気持ちが自分にあるなんて。と驚きながら静かに目を閉じた。