「おはようございます、堀原さん」

「おはようございます」

気さくな態度で話しかける拓也とクールな表情で会釈する勇人、それぞれテレビなどで見た感じ通りの雰囲気に陽菜は内心、うわー!!と叫んだ。

朝陽がKaiserの大ファンで話を聞いたり音楽を一緒に聞いてるうちに陽菜もファンになってしまったのだが、その二人が目の前にいることに焦った陽菜は思わず気配を出来る限り消して堀原の後ろへと回り込んだ。

「こんなところで会うなんて珍しいですね。
堀原さん、今誰の担当マネージャーでしたっけ?」

「今はモデルの秋村陽菜を担当しています」

「秋村陽菜……って、あの彗星のごとく現れたって騒がれてる期待の新人の陽菜ちゃん!?」

ゴンッ!!と額を壁に思いきりぶつけてしまい、辺りに凄い音が響き渡った。
気配を消すことに失敗したことを悟った陽菜が恥ずかしさと痛みに耐えるために俯きながら呻いていると、堀原が、大丈夫か?と聞いてきた。

「だ、大丈夫ですー」

小声で返事をしながら赤くなったであろう額を擦っていると、堀原の後ろから拓也が顔を覗きこもうとしてきたのが見えて慌ててタオルで顔を隠した。

「すっごい音したけど大丈夫?」

「大丈夫だそうです、心配要りません」

「ならいいけど……君、女の子だよね?
可愛い顔に怪我しないようにね?」

見えもしないのに何故可愛い顔と言いきれるのか。
アイドルらしい優しくて甘い台詞に赤面しながら、陽菜は顔を上げることが出来ずに何度も頷いた。

「拓也、そろそろ行くぞ」

「あ、了解!それじゃあ堀原さん、またね。
次は是非噂の陽菜ちゃんに会わせてくださいねっ!」

足早に去っていく勇人と、それを慌てて追いかけていく拓也。
そんな二人の後ろ姿を陽菜はまだ痛む額を擦りながら夢見心地で見送っていた。