「何か良いことでもあったのか?」

勇人と植物園に行った数日後、撮影の合間の休憩中に突然堀原が聞いてきた。

「え、いきなりどうしたんです、堀原さん?」

「最近のお前は表情も仕草も生き生きしているとスタッフから評判だ」

「そうですか?自覚はないんですけど」

だけど、確かに最近前よりも余裕ができて頑張ろうって気にはなっていた。
前も頑張ってなかったわけではないけれど、自分に自信がなくていつも必死で余裕などなかったのだ。

「私もついに目覚めたのかもしれませんよ」

「何にだ」

わりと本気で言った言葉は堀原にすげなく一蹴された。
二人の会話を聞いていたスタッフはくすくす笑っている。

「秋村さん、本当に最近いい表情してますよね。
それに、よく笑ってお話ししてくれるようにもなって、みんな喜んでるんですよ」

「あ、ごめんなさい。
なかなかお話したりできなくて……私……」

「いえいえ、みんな知ってます。
実は他にも結構いらっしゃるんですよ?人見知りだったりあがり症の方」

「え、そうなんですか?」

会う人みんな堂々としていて輝いていて、自分に自信がありそうで……人見知りとは無縁の人達ばかりの世界だと思っていた陽菜は目を丸くした。