お弁当も食べ終わり、二人はまた手を繋いでブラブラと植物園を歩く。
イベントで珍しい蝶々に直接蜜を吸わせるという体験ができるものがあり、陽菜はその宣伝をしているポスターをじっと見ていた。

「やる?」

「やってみたい、ですけど……」

蝶々と言えども触れるのは少し怖いな、と思いつつも興味はある。
そわそわしている陽菜の気持ちを察したように、勇人は近くにいたスタッフに声をかけた。

あれよあれよという間に陽菜の手のひらに蜜を含ませた脱脂綿を乗せられ、その手を勇人が下から重ねるように支え空中に浮かせられた。

ーーう……わ……っ!!

後ろから密着するようにしながら手を重ねられ、しかも整った顔がすぐ真横にある。

陽菜が真っ赤になって硬直した次の瞬間ーー

ブワッといろんな種類の蝶々が蜜を目当てに二人に群がり、二人は目を丸くした。
手のひらだけでなく、服や帽子、とまれるところにくっついてくる。

「こ、こし……越名さんっ!たくさん来てますっ」

「ああ……すごいな……」

あまりの多さに若干引きぎみになる腕を勇人はしつかり支えて動かないようにしている。
その密着ぶりに陽菜は心臓がドキドキと煩いくらい高鳴るのを感じていた。