クールなアイドルの熱烈アプローチ

「越名さんっ!すごいですよ!!早く来てくださいっ!!」

植物園に着いてから、陽菜は興奮が治まらないといったようにはしゃぎ回っていた。
温室で珍しくて色鮮やかな花やサボテンを見た時も冷室で高山植物を見た時も瞳を輝かせていたが、外に出て小高い丘に登ってモデル庭園を見渡している陽菜は今日一番の笑顔を見せていた。

少し遅れて勇人が陽菜の隣に立ち庭園を見渡すと、色とりどりで種類も豊富な花が辺りを埋め尽くしていた。

「すごいな……」

「はいっ!すごいですっ!」

お互い単純な感想しか出てこないが、風が吹き色を揺らす花を前にそれ以外の言葉はいらない気がした。

「あの……越名さん、実は私お弁当作ってきたんです。
あちらのガーデンで食べれるようなので、良かったら行きませんか?」

「手作り?」

「はい、一応……。
お口に合うか分かりませんが……」

苦笑する陽菜を可愛く思いながら、勇人は、すごく楽しみだ。と微笑む。

「あまり期待しないでくださいね。
一般的な味だと思うので」

勇人の笑顔に照れた様子の陽菜が慌てて踵を返そうとするのを見て、勇人がさっと陽菜の手を取った。

はっとした表情で陽菜が勇人の手を見て、そして勇人の顔を見る。
それを何度も繰り返すので、勇人は思わず小さく笑ってしまった。

「朝陽君が言っていた。
君はフラフラする癖があるから手を繋いだ方がいいって。だから、このまま」

そう言って握った手を持ち上げて見せると、陽菜は頬を鮮やかに染めながら微笑んだ。